【神職募集】因島で地元に寄り添う、建築と自転車と耳の神様

 広島県尾道市因島。

 瀬戸内海には大小合わせて680余りの島々が浮かぶが、この因島は瀬戸内海の中でも特に有名な島だろう。中世は因島村上氏が拠点を置き、その様子は近年ヒット小説となった『村上海賊の娘』の中でも紹介された。

 島の中央の丘の上には「日本唯一の水軍城」と言われる因島水軍城があり、まさに瀬戸内の海賊の歴史を伝える島というイメージが強い。


「当神社は宝亀4年(773)創立の因島最古の海を臨む高台に鎮座する古社です。古くからここ因島で、多くの皆様に崇敬されてきました。」


 そう語るのは、大山神社の宮司の巻幡俊さん。

 今回はその因島の南部、土生町に鎮座し、因島村上氏の守護神、造船や建築の神として崇拝されてきた大山神社を紹介する。


日供祝詞を奏上する宮司巻幡俊さん


 瀬戸内海で隔てられた本州と四国を結ぶルートは3つある。

 一つは兵庫県の明石から徳島県の鳴門を淡路島を経由して明石海峡大橋と鳴門海峡大橋で結ぶルート。一つは岡山県の児島と香川県の坂出を瀬戸大橋で結ぶルート。そしてもう一つが尾道と今治を「しまなみ海道」で結ぶルートだ。

 しまなみ海道のルートは、海峡に大きな橋を架けた他ルートとは異なり、瀬戸内海の大小さまざまな島々を結んだ道だ。その島には現在、合わせて約8万人もの人が住んでいる。当然、古くから本州と四国を結ぶルートとしても、瀬戸内海の海運ルートとしても交通の要所だった。


Googleマップ 因島近海


 そして一口に村上水軍と言っても、しまなみ海道の能島、来島、因島の三家に分かれており、それぞれが瀬戸内の海運を支配していた。因島村上氏は戦国時代、三家の中でも特に中国地方の覇者である毛利氏に近い立地と立場にあり、毛利氏が山口の陶氏に大勝した厳島の合戦や、織田信長の水軍を壊滅させた第一次木津川口の戦いでも戦果を挙げた水軍として知られている。

 その一族から崇拝されてきたのが、今回紹介する大山神社だ。創建は773年、大三島の大山祇神社から分霊されたと言うが、境内からは現在では神宝となっている弥生時代の須恵器と高坏が発見されており、古代から神聖な場所であったらしい。


大山神社拝殿


 そんな歴史と由緒のある神社の第31代目宮司の巻幡俊さん。神職になられたきっかけは、

「代々社家への使命感」

 だと言う。


「一日のお仕事は主に、日供・お掃除・神事準備・地鎮祭などのお祭・片付けなどです。神事を大切にし、お参りの方やお施主様に誠意を持って接する事を心がけています。」

「祝詞を上げるというのも、一期一会の機会です。神事を心を込めて、ご奉仕させて頂いています。」


 そういった厳粛な側面がある一方で、境内は南西に海を見下ろせる高台の上にあり、非常に明るく開放的な雰囲気だ。近隣の方のお参りも多いように見える。

「地域にとって神社は空気の様な存在です。しかし、私たちは一歩前に出て地域との関わりを深め、神社の存在を日々の暮らしの中で実感して頂ける関係を築きたいと考えています。神様の坐す社として頼りにして頂くとともに、安全パトロール・観光などを通じて地域貢献型の神社を目指しています。」


 観光、というワードが出たが、実際境内にはツーリング中に立ち寄る観光客も多い。大山神社のFacebookページにも、自転車とともに参拝の記念写真に写る自転車乗りの方々がしばしば投稿されている。

 実は大山神社には「世界中のサイクリストの守り神」と言われる「自転車神社」が境内にある。自転車神社の正式名称は和多志神社であり、祭神の「和多志大神」は大山積神の別名とされるが、「和多志」とは「渡し」、つまり島を通って海を渡る旅人の神様として祭られている。


宮司の巻幡俊さんとeNShare CyclingTeamの皆さん


 大山神社は自転車神社で和多志大神をお祀りするだけではなく、福山のサイクリングチーム「eNShare CyclingTeam」を応援したり、毎年5月には「自転車神社祭」というお祭りも開催している。そのお祭りでは湯立神事という神事を行うだけではなく、境内で自転車乗りたちが尻相撲をしたり、自転車の障害物競争をしたりと、楽しい雰囲気のものになっている。

 しまなみ海道がサイクリングロードとなり観光地として活性化していく中で、その旅人たちの安全を見守るとともに、旅人たちが立寄る観光スポットとしても大山神社は機能しているのだ。


自転車神社祭の様子


 巻幡俊さんは話をつづけた。

「この島は中世、因島村上水軍が活躍し日本遺産に登録されています。そういった大事に残していくべき歴史がある一方で、造船や海運が盛んで進取の気質に富み様々な文化が流入しています。瀬戸内の中央部に位置し、景観と環境は海外からも注目される島の一つで、現在も造船鉄工業が盛んな島です。」

「島は、神社や水軍城だけではありません。万田発酵パークや造船所などもあり、何よりも気候が温暖で海と山と島が橋で結ばれ、観光面でも将来性がある島と考えています。」


 海運が運ぶ新しい文化。

 しまなみ海道を通って訪れる様々な人々。


 この島は信仰の伝統を重んじる精神と、新しいことを取り入れる気質がバランスよく存在しているのだ。そして、その文化とともに歩む大山神社にも沢山の人が訪れている。

 大山神社はせとうち七福神の一つでもあり、七福神巡りの観光客も多い


「年間参拝者は、約3万人です。
 特に人が集まるお祭りでは、秋の例大祭を始め、地域に根ざした節分や夏越祭、崇敬者(信者)を対象にした耳のお祭りや自転車神社祭・稲荷祭など、沢山のお祭があります。いずれもお祭の世話人さんとの打合せや調整、装束・神具・お供えなどの諸準備。事前の祭場及び境内の設営や片付けなどで半月程度、秋の例大祭は業務の合間を見て一ヶ月近く準備します。」

 耳のお祭りというのは、境内にある耳明神社のお祭りだ。ここにも、耳の病気を持つ方やそのご家族などが全国からお参りに来るという。春日造りの耳明神社本殿の両側に耳を模した造形が目立つ、ユニークな神社だ。


境内にある耳明神社

 様々な顔を持つ、因島の大山神社。現在職員は15名で、そのうち常勤は12名、非常勤が3名だという。お祭りも多く、非常に忙しそうな印象を受けるが、実際に働いている人はどう思っているのか。

「もともと神職や巫女、神社に興味がありました。」

と語る、巫女兼事務職の松下千空さんにお話を伺った。


インタビューに答えて下さった松下さん


「私の職務は主に巫女と事務です。それに特命で観光関係を担当しています。この神社は地域外からの観光客が多いだけでなく、地域内の出張祭である地鎮祭も多いです。」

 実際、それについては事前に見ていたFacebookページからも感じさせられた。地鎮祭に神職の方が外出されている写真を多く見かける。それは、祭神である大山積大神が山の神、船玉の神というだけでなく、建築土木工業の守護神であるというのも理由らしい。

 また、正月は近隣の企業から社員たちが祈祷に訪れるだけでなく、神職の方々がオフィスに出かけて祈祷を上げている姿が多く掲載されている。地域に根付いた神様であると感じさせられる。


 だからこそ、この仕事のやりがいを聞いた時に、松下さんはこう答えたのだろう。

「いろいろな方々とお話しが出来、参拝者様から感謝をされる事です。地鎮祭等でお施主様から感謝されたり、お礼参りで喜んで頂いたりしています。また、お祭などでも地域の方々が喜んでおられる様子を拝見したときはとても嬉しい気持ちになります。」


 そんな大山神社の神職・巫女の募集。宮司の巻幡俊さんに、どんな方に働いて欲しいと思っているのか、伺った。


「神様と氏子崇敬者様を大切にし、荘厳な神事がご奉仕出来、神社に貢献出来る人が理想の神職であると思っています。」

「従って、やはり真面目で神社に対して崇敬の念があるというのが条件です。そして、真面目なだけではなく、人々と接するお仕事ですので、明るくて人と接するのが好きな方が向いていると思います。それと、外出が多い神社ですので、車の運転は上手であって欲しいです。」

 ちなみに今回の募集、運転免許以外は特に資格条件などは設定していないという。

「まずは見習いから初めて頂き、実習を行います。だいたい5年を目処に神職資格取得講座への参加を許可するかどうか、宮司が判断します。」


 地域に根付いているだけではなく、観光客にも広く愛される大山神社。

 神職として求められるものは多いと思うが、だからこそ遣り甲斐を持って働ける環境がここにはあると感じた。


海外のサイクリストと神職の皆さんの記念撮影


◆求人概要

宗教法人 大山神社・大山稲荷神社

職種   神職

給与   大卒 220,000円~ (経歴による)

待遇   雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険
     退職金制度:あり
     賞与:1年経過後より発生

勤務地  大山神社
     広島県尾道市因島土生町1424-2

勤務時間 8時30分~17時00分
     休憩時間90分

休日   年間休日日数78日(月6日、ローテーション)
     夏季休暇3日、正月休暇3日

定年   60歳(65歳までの再雇用あり)

勤務内容 
・地鎮祭等の出張祭典
・地域の伝統文化である、祭りの振興
・お宮参りや耳、自転車等のご祈願
・観光客等の参拝者受付、案内対応
・境内掃除や整備作業
・事務業務(ワード・エクセル使用)等

応募資格   要普通自動車免許(AT限定可)

採用予定人数 2名

選考プロセス
   ① ooyama@jinja.net より問合せ後、履歴書送付
   ② 面接、筆記試験、PC操作の簡易試験を実施

応募する方はコチラ