【講師募集】子供たちが空手を通して頭の体操をする

 東京オリンピックで正式種目となった空手道競技。スポーツ番組やニュース番組でも取り上げられる機会が増え、注目が高まりつつある。

 今回はそんな空手道の講師の募集だ。


 訪れたのは東京都月島。
 相次ぐ高層マンションの建設で新住民が増え続ける中央区を中心に活動している拳信会空手道にお邪魔した。

 駅から稽古場までの道中、両側には高層マンションが立ち並ぶ。これだけマンションがあるのであれば、生徒募集はポスティングが中心かと思い聞いてみると、

「いや、ポスティングはしていないんですよ。ほとんどが口コミとホームページからの問い合わせです。」

 そう語るのはAJKA International日本本部 一般社団法人国際空手道拳信会師範の岩田拳信先生。口コミで広がる指導力には自信があると言う。


 岩田先生は日本で空手をはじめ、大学はカリフォルニア大学へ進学するために渡米。そこでも空手部に所属していたという異色の経歴の持ち主だ。
 この大学の空手部は岩田先生いわく「泣く子も黙る強者」、元日本空手協会師範の故西山英峻先生がアメリカで育てたお弟子さんたちが監督やコーチをしていた。当然、西山先生も頻繁に地獄のような稽古をしに来られていたそうだ。


「大学でも空手をやりつつ、経営学と児童心理学を学びました。児童心理学では障害児や今よくテレビで取り上げられているADHDの児童への教育指導を行っていたので、その時から子供と接する機会は多かったです。また、当時のアメリカには日本空手協会のみならず、蒼々たる著名な各流派の先生方が多数いらっしゃって、色々とご指導いただきました。今でもお付き合いをいただいています。」


 先生は卒業後日本に帰国し某ベンチャー企業に就職するが、後に会社を立ち上げる命を受け、アメリカへ戻る。そこから、事業を立ち上げ、順調に拡大。またITビジネスにも関わり上場するまでに至った。

 そんな激動のビジネスマンとしての人生は2007年に引退し、5年かけて拳信会を立ち上げたという。

「子供が通っていた小学校の体育館があいており、私が空手をやっていたと聞きつけた校長先生の依頼で、指導を始めました。最初は自分の子供と生徒1人の2人でのスタートでしたが、口コミが広がり、どんどん生徒が増えていきました。そして私もビジネス引退後の人生を空手に費やすことに決めたのです。」

 口コミで広がった拳信会。岩田先生曰く、大学時代のアメリカの児童心理学が活きているという。

「子供たちをいかにコントロールするかが大事です。休憩のときはハチャメチャに騒ぐこどもたちを稽古が始まったらしっかりと集中させる。そのメリハリが大事なのです。」


 そんな拳信会の空手は稽古内容も特徴的だ。
 基本的な突き、蹴りの稽古以外に頭の体操の時間がある。
 その様子は日本の伝統武道とアメリカの児童心理学の融合だ。

「せっかく空手をやるのであれば、頭も良くなって欲しいと思っています。ポイントは右脳と左脳を同時に働かせること。ただ指示に従うだけが稽古ではないんです。例えば、今日やったのは風船を持ちながらの前蹴りの稽古。風船は割れるものですが、それを割らずに正しい姿勢で蹴り、つまり当たれば風船が割れてしまう動作をするという矛盾をこなすことで、頭に刺激を与えるのです。」


「それと、円陣を組んでのスクワット。個々違う動きをすると崩れてしまうので、周囲とタイミングを合わせることが必要になります。」


 他にも、足と手で違うものを出すジャンケンをしたり、ブリッジで移動したりするなど、岩田先生の頭の体操を兼ねた空手稽古はメニューが豊富だ。いずれも児童心理学に基づいているという。

「これらのメニューはFacebookページにも公開していて、他道場で導入するところもあるようです。技術の流出と言えばそうですが、そこは目くじらを立てずに、お互い稽古の質を上げていければいいと思っています。」


 また、取材していて気付いたのが、この道場は実に国際色豊かだということだ。
 先生もしばしば指導に英語を使う。しかし英語を教えているわけではない。国際的な団体を目指しているのかと聞くと、そうではないという。


「インターネットで検索した時に、中央区付近で、英語の”KARATE”で出てくるのがうちくらいなんですよ。電話での問い合わせでも私は英語で応対が出来るので、結果的に集まってきたようです。」


 中央区は確かに都心の一流企業に勤める人が多く、ビジネスで来日した外国人の家族が多い。

 生徒の3分の1は外国籍、3分の1はインターナショナルスクールに通うという顔ぶれ。年に数回、海外からも出稽古や指導員が参加することもあり、その時は、全てを英語で指導する。ここでは、稽古とは呼ばずにLessonと呼んでいる。

 しかし先生が言う「問い合わせで英語ができる」という理由だけはではなくて、バラエティ豊かで生徒に頭を使わせる指導方法も外国人生徒の父母に人気があるのではないかという印象を受けた。


 そんなアイディア豊かな稽古で育った生徒たちのレベルは年々上がっており、7月23日に開催された東京都空手道連盟 第16回幼年空手道選手権大会の組手の部で優勝した男子生徒もいる。

「次は1月に行われる第24回全国道場選抜空手道大会の上位入賞が目標です。また、全日本小学生空手道選手権大会、全日本中学生空手道選手権大会でも活躍する選手を育てていきたいと思っています。」


 ユニークでハイレベルな団体、拳信会の指導員募集。岩田先生にその条件を聞くと、シンプルな答えが返ってきた。

「やはり子供に好かれるというのが一番ですね。子供に好かれるというのが指導者として必要な素質だと思います。メリハリのつけ方については、子育ての経験をしないとなかなか得られないものです。若い人であれば実体験が無いので無理はありません。
 一喝したときにシャキっとさせる、ここはあくまで空手道場、学校ではないので堂々と喝を入れます。怪我をさせないためにもそれは必要です。そのメリハリは普段の子供たちとの接し方も大事になってきます。そういった、指導のメリハリのつけ方についてしっかりと研修でお伝えしていきます。」


 なお、拳信会ははじまって3年半、1度も怪我人を出したことがなく、加入しているスポーツ保険会社からは優良団体だと言われるのだそうだ。

 指導経験が無い人について設ける研修期間については、形や基本の稽古はもちろんだが、指導理論に重きを置くという。なお、性別や年齢は不問とのこと。採用はあくまで人柄重視で行われる。


 また、拳信会は松濤館流の団体だが、四大流派等の伝統派空手の出身者も募集対象に含めるのだそうだ。帯は現段階では学連や高体連、会派のものでかまわないという。

「ただし、現在は持っていなくても、必ず全日本空手道連盟の公認段位を取得すること。これは応募にあたっての絶対条件とさせていただきます。」

(記者注:全空連協力団体の段位は全空連公認段位に移行可能)


 現在、勝どきの教室を1人の20代の女性指導員に任せているそうだ。彼女は他団体の松濤館流出身で、拳信会の三段を取得し全空連公認初段も取得。まだまだ子供たちをコントロールしきれていないが、頑張っているという。他にも現在研修の指導員候補がいるそうだ。


 道場生の人数が増え、支部も拡大している中での指導員募集。

「将来的には海外支部にも行くことも可能です。AJKAはアメリカやヨーロッパ、インドにも支部があります。また暖簾分けや自分の道場を持つことも可能です。」


 最後に、拳信会の理念をここで紹介する。

 当会では、空手道を通じた武道教育の一環として、精神教育に重きを置き、「正しい心と頑丈な体作り」を理念としており、自分に厳しく、人に優しくというのは理想かもしれませんが、それこそがお真の日本で忘れられている本当の心だと思います。
グローバル化が進む今の世の中で、これからは日本という概念ではなく、世界の概念で人を育てていかねばならないと考えており、空手道を通して真に世界貢献できる人を育てていけるよう努力していきます。

 グローバル社会の中では空手も日本を象徴するコンテンツであり、オリンピック競技化によってますますそれは進むことが予想できる。

 その中で、単にスポーツとして子供に教えるのではなく、頭の体操等を通して空手道を通した教育の可能性を広げる拳信会。次世代の空手指導を切り開く、興味深い団体であると感じた。


◆募集概要

一般社団法人国際空手道拳信会

雇用形態 アルバイト(社員登用可)

給与   当初時給2000円 (経験、レベルに応じて昇給)

待遇   研修(3ケ月〜6ケ月)を実施 ※研修期間中は時給1,250円〜
     (指導未経験者は要研修料)

勤務地  東京都中央区月島ほか(クラスは勝どき、日本橋浜町、新川に展開)

勤務日  週1日~

応募資格 伝統空手道経験者

    (採用後、全日本空手道連盟公認段位取得が必須)

採用予定人数 1名

選考プロセス 【指導員募集】から応募、面談を実施

応募する方はコチラ

和はなび

伝統文化応援サイト